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Appoggio vol.20 2011 winter


対談

「遺言書キット」が売れている… “家族へのメッセージとしての遺言書”の誕生秘話とは


コクヨS&T株式会社 コンシューママーケティング事業部 リテール企画部 バリュークリエイショングループ リーダー
2003年コクヨS&T入社。営業向け販促部門で顧客の声を商品や販売に活かす仕事に携わる。入社5年目の2007年、「遺言書キット」を企画。常に新しいことに取り組もうという社風の中で、2年をかけて企画が実現した。商品化に当たっては、一般消費者への丹念なインタビューに基づいて、商品の仕様・デザインの決定、解説書「遺言書虎の巻」の執筆まで、細部までこだわりにこだわりを持って自らの手でつくり上げた。

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岸田裕子さん
コクヨS&T株式会社
コンシューママーケティング事業部
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本誌編集長 江里口吉雄

コクヨの隠れたヒット商品「遺言書キット」企画担当者・岸田裕子さんのアイディアの 背景と商品化にこめた熱い思いに迫る。

江里口 文具メーカーのコクヨさんが「遺言書キット」を発売されたという話は、われわれ相続業界ではすぐに評判になっていました。コクヨさんが参入するほど遺言書が一般化したのかという驚きがあったのです。実は7月に放送されたTV東京の『ガイアの夜明け』の相続特集で、私ども相続支援ネットも取材を受けました。オンエアを見たとき、「遺言書キット」の企画者が岸田さんだと知って、非常に興味を持ちました。正直、若い女性社員の方が遺言書というのが、意外でした。それで、ぜひお会いしたいと思った次第です。今日は、「遺言書キット」発売までの経緯や岸田さんと相続との関わりなど、ざっくばらんにお聞きしたいと思います。まず、この商品企画はどんなきっかけでスタートされたのですか?
岸田 企画がスタートしたのは2007年5月でした。お客様の“困りごと”を解決する何か新しい商品を企画しようということで、いろいろな案を出していたのですが、ふと遺言書に関する学生時代の経験を思い出しました。私は法学部の出身で、学生時代に法律相談のボランティアをしていました。遺言書を書きたいといって相談に来られる方も多かったのですが、弁護士さんや公証役場をご紹介しようとすると、「そこまではいいです」と皆さん帰っていかれるのです。ちょうど民法の講義で遺言書がなくて悲惨な例をたくさん学んでいたので残念でした。書きたい気持ちはあっても、専門家にお願いするところまでは至れない、その一歩が踏み出せない方が多いのだと実感しました。遺言書は専門家に依頼するものだと思っていたのですが、教授に「自筆証書であれば15歳以上の人なら自分で書ける」と言われ、大学2年、20歳のときに自分でも書いてみたのです。自分でいろいろ調べて、家にあった便箋と封筒で書きました。でも、書いてはみたけれど、すごく貧相な感じになり、内容にも不安が残る状態で。結局、きちんと完成しないまま、まだ死なないからいいやとほったらかしてしまいました。
江里口 それで自筆証書遺言を書くためのキットがあればいいと思いつかれたのですね。
岸田 はい。ニッチ過ぎるといわれて通らないのではないかなと思っていたのですが、思いがけず“面白い!”と言われまして、商品化のための発表会に提案することになりました。そこで、まず遺言書について一般の方がどう思っているのか、リサーチを始めました。年齢や職業も幅広く、6カ月ほどかけて100人くらいの方にヒアリングしました。
江里口 会社でリサーチの予算がついたのですか?
岸田 いいえ、お礼のお支払いは一切なし。個人的なつてで、社員食堂で働いている方のお友だちとか、仕事でたまたま関わりがあった方のお知り合いとか、1人1時間くらいお付き合いいただきました。お金を払ったりすると逆に純粋な意見が聞けないということもありますから、かえって率直な考えを聞けてよかったと思います。
江里口 リサーチではどんな意見がでましたか?
岸田 遺言書を書くということに、皆さん非常にハードルが高いと感じていらっしゃるとわかりました。私も専門家ではありませんが、法律を学んだ人間からみると、弁護士も公証役場も特別なものではありません。しかし、普段縁もゆかりもない人にとってはすごく心理的なハードルが高いのですね。実は、社内では「専門家がたくさんいる中でコクヨがやる意味が何かあるのか」という意見がありました。コクヨは、文具メーカーということで一般の人にも親しみ感がある。それがメリットであり、コクヨが敢えて取り上げる意義ではないかと気付いたのです。
江里口 「遺言書キット」をどのように使ってもらいたいと考えたのですか?
岸田 この商品のコンセプトは「最初の一歩」です。この商品で1回は遺言書を書くというゴールにたどり着いていただきたいのです。それが30歳のときだったとしたら、50歳になったときには公証役場に行って公正証書にしようということでもいい。多くの方が“書こう”という気持ちは持っているのに、いつかそのうちということでそのまま書かずに終わってしまう。これはすごくもったいない。もっと気軽に一度は遺言書の完成までたどりついてほしいと思ってこの商品を企画しました。これが遺言書のいちばん最初の入り口になればいいと思います。
江里口 キットの材料にもこだわりが見られますね。この台紙は、お見合い写真かなという感じです。
岸田 ブライダルフォト台紙に近い仕様にしています。ヒアリングしていたときに、みなさん遺言書の保管について非常に気にしておられました。保管しているうちになくすのではないかと。実際に、薄っぺらいから何かに挟まってどこかにいってしまったという方もいらっしゃいました。それを聞いたときに台紙をつけるべきかなと考えました。
江里口 遺言書の用紙も特殊なものですね。
岸田 コピーすると「コピー」「複写」という文字が出ます。厚みをだしており、コピー予防用紙の中でも上質なものを目指しました。
江里口 2415円という販売価格はどのように決められましたか?
岸田 書店で気軽に買える上限として、2500円以内であればいいのではないかというラインが出ました。実は、さきほどお話しした台紙は、単独で1000円くらいで売られているものに相当します。台紙の仕様を落として価格を下げるという話も出ましたが、本当に作りたいと考えている方にとっては、中途半端なものは要らない。ヒアリングでも、「できれば漆塗りの箱に入れたいくらいだ」という意見もありました。みなさん、こだわっていたので、みすぼらしい仕上がりにはしたくなかった。そこは妥協せずにいきました。
江里口 販売は書店のルートで?
岸田 いいえ。書籍ではなく文具売り場で文具として販売しています。文具と書籍を両方扱っている書店さんでは、売り場担当者の方の判断で、書籍のほうにも置いてくれていることもあります。
江里口 なるほど、誤解していました。ベストセラー書籍というイメージが強いですが、文具なのですね。解説書の作成はどのように?
岸田 すべて私が書きました。労力からみると、解説書もかなりかかりましたね。
江里口 ご自身で書かれたとは驚きました。これはもう立派な出版物ですよ。監修として弁護士事務所さんを入れておられますね。
岸田 解説書の中で、遺言書に関するインターネット相談の窓口として弁護士ドットコムさんをご紹介しています。そちらの系列の事務所さんが法律監修を引き受けてくれたのでお願いしました。
江里口 日本では相続というと弁護士と税理士の独占業務で、税理士でない者が税金のことを話したり、弁護士でない者が民法について語ったら違法だと言われてきましたが、これは根拠のないこと。税理士でない者、弁護士でない者が税金や法律のことを講演したり書いたりしてもなんら問題はないのです。あとがきで、「何とか事務所の何とかさんには大変お世話になりました」と書いておけば十分かなと思います。税理士でないFPの立場からすると、コクヨさんのような企業にこそ独自にどんどん攻めて書いていただきたいと期待しています。
岸田 そこまで考えたわけではなくて、普通に私が書いたものをチェックして監修していただいただけです。さすがに一社員が作りましたではお客様も心配だと思いますから。
江里口 相続というと顧客層が普通は50代以降、私どもでは60代、70代と結構高いのですが、「遺言書キット」は20代から使えますね。
岸田 メインターゲットは30〜40代です。若い方はまだ専門家にいくほど困ってはいない。30代の人がいきなり専門家のところにいって相談して遺言書をお願いしますということは少ないですよね。でも、遺言書を書きたい気持ちは持っていたりするので、30代のそういう方にお届けしたいなというのが、元々の私の考えでした。だから、記入例の漫画でも20代、30代の夫婦を入れて作っています。若い人にもっと気軽に遺言書を書いてほしい。本当は新婚夫婦にも書いていただきたいなと思っています。
江里口 社員が結婚したら会社から贈るとか。
岸田 あったらいいなとは思います。遺言書を書いたほうがいい層の一つとして「子どものいない夫婦」が挙げられますが、私のイメージとしては、22歳で結婚したとすれば、その時点では子どものいない夫婦なので、そういった若い層にも書いてほしいです。
江里口 結婚したら遺言書を書こうということですね。解説書の文例を見ると、若い父親が妻や子どもに思いを遺すという使い方も意識していますね。
岸田 仲がよくて、うちは争いなんて起こらないよとおっしゃるご家庭が多いですが、争いを防ぐためだけでなく、若いファミリーでは万一のとき、なにか遺るものがあったほうが家族も心のよりどころになるはず。遺言書にあまりメッセージを書くなというご意見もありますが、私は付言事項にひとこと、“ありがとう”だけでもメッセージを書き記すことに意味があると思うのです。ヒアリングの中でも、若い男性の方がこんな話をされました。2歳の子どもがいるけれど、最近忙しいし、いま急に倒れたりしたら子どもには自分の記憶がないかもしれない。手紙を書いておきたいけれど、改めて便箋に向かって「わが子へ」なんて気恥ずかしくて絶対にできないと。そういう方でも遺言書を書いたついでだったら、付言事項に「ありがとう」とか、お子さんへの思いを書けるのではないかと思います。
江里口 遺された家族が「ありがとう」のメモで救われたという話もききますね。
岸田 実際に死ななくても、30歳で書いた遺言書を何年か経って見たら、「俺は子どもが生まれたときにこういうことを書いていたのだな」と、自分自身の振り返りにもなると思います。自分自身に対してもそのときの気持ちを遺せる。そういうハートフルな方向でいきたいなと思っています。家族のために、争いは起こらないかもしれないけれど、お守りというか、念のために書いておこうよということです。
江里口 お話をお聞きしていて、相続を一つのキーワードにして、世の中全体に対して、特に同世代の方々へメッセージを発信したいという岸田さんの強い意欲を感じました。 「遺言書キット」の登場で相続というキーワードが20〜30代の若い層におりてきた。その意味では、日本の相続、戦後民法の歴史の中で革命的な功績ではないですか。
江里口 ところで、商品の色、このオレンジは印象的ですね。相続というとどうしても暗いイメージで、白と黒のような色合いを連想しがちですが。
岸田 いろいろ考えて、どうしてもオレンジを使おうと思ったのです。おっしゃる通り、ヒアリングした中でも、遺言書というとやっぱりちょっと…と暗いイメージをお持ちの方もいらっしゃいました。そこを何とか逆にもっていきたかった。ただ、遺言書は高齢の方も使われますし、男性も対象ですから、明るいイメージで性別、年齢を問わず受け入れられやすい色ということで、オレンジを採用しました。ちなみに、オレンジはコクヨS&Tのコーポレートカラーでもあります。
江里口 昨年、「相続はおそろしい」という本が話題になりました。岸田さんが書くとしたら「相続は楽しい」といったイメージですね。
岸田 私も充分相続は恐ろしいと思っています。 お金の面でもめるところまでいかないとしても、感情面では問題が起こりやすい。お金面でのトラブルの解決はもちろん大事ですが、そこで何かメッセージがあれば、感情面で違ってくるのではないかと思います。たとえば「お父さんがそう考えているのなら、しかたないな」などと納得感が高まるかなと。メッセージが遺っていることで心から円満に相続できる。遺言書の役割は大きいと思います。
江里口 ベストセラーの背景には岸田さんの熱いメッセージ、固い意志があったのですね。今後のご活躍を期待しています。ありがとうございました。


インタビュー

葬祭アドバイザー登場


起業支援会社にて支援相談・人材育成に携わったのち、生命保険業界、IT業界を経て、2005年FPとして個人事務所を開業、FP資格取得講座の講師やFP向けセミナーの講師として活動開始。FPの守備範囲とされる、いわゆるマネープランの分野にとらわれることなく、一般消費者に知っておいてほしいテーマを取り上げ、生活に役立つ情報提供を行っている。悪質商法やサイバー犯罪の手口と対策のほか、あまり知られていない葬儀のカラクリやしくみ、老いじたく、生命保険見直しのポイントなどセミナーテーマは多彩で、幅広い知識と豊富な経験に基づいた軽快な語り口に定評がある。
2009年、明石シニアコンサルティングを設立、葬儀・老いじたくにフォーカスしたライフプラン相談をスタートした。「生きているとき」から「逝去したあと」のことまでを総合的にサポートしている。

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明石久美さん
明石シニアコンサルティング
代表取締役

FPとしては異色の葬祭アドバイザー。その仕事の中身を探るとまさにFPの究極の世界であると知る。葬儀の完全マニュアルを用意して葬祭アドバイザーとして活躍する明石久美氏にその仕事の魅力を語ってもらった。

――FPとしてご活躍の明石さんが、葬祭アドバイザーとして新たに葬儀のコンサルティングのお仕事を始められたとお聞きしました。どんなきっかけだったのですか?
明石 相続の仕事で士業の先生たちとネットワークを組んでやっている中で、お葬式について知っている人が非常に少ない、葬儀の相談にのれる人がいないと気が付きました。成年後見や遺言書の作成、相続の生前対策、死後の遺産分割と、皆さんいろいろやっていらっしゃいます。葬儀だけ抜けていたので、そこを私が埋められれば、最初から最後までできるかなと。そういうことで始めました。
――葬儀というとちょっと言い出しにくいような。
明石 いまは雑誌などの特集でも取り上げられていて、もはやタブーではなくなっています。
――どんな立場の人が相談するのでしょう?
明石 ご本人のほかお子さん、特に喪主になる予定の方ですね。いつ何があるかわからないから相談しておきたいと。ただ、親には知られたくないという方はやはり多いです。
――顧客開拓のルートは?
明石 私のセミナーを聞いて相談を申し込んでくれる方もいらっしゃいますが、ほとんどが口コミや紹介です。士業の方やFPの方が、遺言書作成や相続の仕事の中で葬儀の話が出ると紹介してくれます。ビジネスですから、もちろん紹介料をお支払いしますが、実はそのほかにも紹介者にメリットがあるのです。コンサルを受けると葬儀社まで決めますから、その方のご家族に何かあったときに葬儀社から私に連絡があります。私からその情報をお伝えすることで、紹介者の方はお亡くなりになった事実を知ることができます。お通夜などで、「相続で困ったことがあれば相談してくださいね」と言えるじゃないですか。年間でコンサル契約をしているようなお客様でもわざわざ訃報は伝えないものですから。
――自然な流れで相続の相談に入っていける。それは大きいですね。
明石 ご家族が亡くなって辛いうえに相続の問題が発生するわけです。お客様にとってもそんなときに相談できる専門家がいてくれるのは心強いはず。お葬式の部分を私が埋めることで、ライフプランから相続までトータルでやれるようになります。遺言書を作成するうえでも、葬儀は無関係ではありません。遺言書に祭祀承継者を残すことがありますが、葬儀が終わって遺言書を開封したとき、それが原因でもめることもあるのです。
――祭祀承継者は仏壇やお墓を守っていく人ですね。
明石 長男夫婦が都会に出ていて、次男夫婦が実家に住んでいる場合、体裁として長男が喪主を務めても、祭祀承継者は次男というケースが多い。お互いがそれをわかっていて、とりあえず喪主は長男というならいいのですが、長男が祭祀承継者まで全部自分が面倒をみるのだと思っていて、遺言書をあけてみたら違っていたということになるとたいへん。反対に、祭祀を承継したくない人が書いてあると、喪主に押しつけようとしたり。だから、遺言書に祭祀承継者をのせるのなら、喪主が誰かも同時に決めて話し合っておかないといけないのです。遺言書は自分が死亡した後のこと。だったら、死亡したときの葬儀のことも考えておくべきだと思います。遺言書作成の過程でお葬式の相談もできるのが理想ですね。
――お葬式をどうしたいというご本人の意思もあると思います。最近は故人の希望で葬儀はとり行わないとか、香典は辞退しますとか、色々な形がありますね。
明石 それが意外と雑誌やメディアに踊らされている人が多いのです。たとえば費用はかけずに身内だけで小ぢんまりとしたいとか、お葬式なんてやらなくていいという方も多いですが、それでトラブルになったり、かえって高くついたりするケースもあります。葬儀社の言いなりにやってしまったばっかりに、あとで他人のお葬式にいくたびに思い出して後悔しているという人もいました。
――自分が喪主の側で葬儀を経験するというのは、それほどないですからね。
明石 喪主になる方が必ず葬儀社と打ち合わせをするとも限りません。長く入院していて心の準備がある程度できていればいいですが、急死されたような場合だと、一番近い家族の方が放心状態で葬儀社と打ち合わせをすることもできなかったりします。そんな時、誰が代理人を務めるのかまで考えておく必要があります。そうでないと、費用をかけたくないはずが、出しゃばってくる親戚の意見で費用がどんどんかさんでしまうということにもなりかねません。あらかじめどういうお葬式にしたいかご相談いただいて、葬儀社まで決めてあれば、亡くなったという連絡だけで、あとは決めたとおりに進めていけます。私がコンサルの依頼を受けたお客様については、ご希望があれば当日の立会いもします。
――明石さんにコーディネートしていただくコンサルフィーはどれくらい?
明石 葬儀の価格に関係なく、基本は一律14万円程度です。ご両親・夫婦同じ条件であれば費用は変わりません。一人あたり7万円程度で準備することができます。
――お客様にはどんなメリットがありますか?
明石 まず費用が安くできます。葬儀の場所や規模にもよりますが、都内は公営の斎場がほとんどないので、特に費用面の効果が大きいです。先日都内で扱った案件は、他の葬儀社でやるより80万円くらい安くできました。コンサル料を支払ってきちんとプランニングしたほうが、ご希望に合ったお葬式ができて、なおかつ費用を抑えることができる。公表はできませんが、費用を抑えるにはポイントがあって、下げられるところと下げてはいけないところがあります。全体的に費用を下げたいというのは最悪で、安っぽいお葬式になってしまいがち。目に見えて費用が下がらないとしても、必ず費用相当以上にご満足いただける内容にできる自信があります。もう一つ、葬儀社の敷くレールにのったお葬式ではなく、自分がこうしたいと望むお葬式にすることができるのもメリットです。
――実際にどんなお仕事をしていただけるのでしょう?
明石 葬儀に関する相談や都内近郊なら葬儀社紹介もしていますが、メインはトータルな葬儀コンサルティングです。プランニングをする上では、その方がどんな目的でお葬式をやりたいのかをベースにします。コンサルでいちばん重要な点です。それによってお葬式のスタイルが変わってきますから。たとえば、お葬式は色々な方にお知らせするものだという考えであれば、家族だけではなくて色々な方をお呼びする形にします。それを家族だけでやってしまうと、その方の本来のお葬式ではなくなってしまいます。お別れの場だというのであれば、お別れの場をつくってあげます。最近は、自宅に一度安置することができないという人が多くなりました。ご近所に知られたくない、スペースがないなど理由はさまざまです。そうすると、どこか別の場所に安置することになります。次にお会いするのは、通夜の日で、お通夜やりました、告別式をやりましたという機械的な流れでは、ゆっくりお別れする場が持てないのです。その方のご希望を必ず盛り込む形のお葬式にしていきます。
――葬儀の内容まで事前に決めるのですか?
明石 そうです。内容をある程度決めて、葬儀社へ見積もりを依頼します。その準備として、細々とした質問をしていきます。葬儀社へ予算を伝えてしますと、その金額で見積もりを作成されてしまいますので、積み上げ式で見積もりを作ってもらうためです。亡くなった時の搬送先はどこにしたいか。葬儀はどこで行いたいのか。祭壇はどんな形がいいのか、祭壇のカタログを見ていただいて大きさ、色調などのイメージをつかみます。祭壇の大きさといってもわからないと思いますが、棺が180センチなので棺との対比で見るとイメージしやすい。お花は菊が主体か、洋花か。参列者の人数によってお部屋の大きさが変わりますから、お部屋の大きさ、祭壇の大きさ、予定される供花の数など、バランスを考えてプランニングします。ただし、コンサルタントとしてこちらからアドバイスをすることもあります。お亡くなりになる方の年齢や親族関係、喪主になる方の立場によっては、家族だけの葬儀を希望されても、それがふさわしくないケースもあるからです。家族で小さなお葬式をしたばっかりに、毎週毎週、家に弔問客が来てまったく気が休まらないということもあります。
――平均的な葬儀費用はいくらぐらいかかるのですか?
明石 場所や人数によって異なりますが、都内近郊ならお布施を除いて一般的に200万円くらいといわれています。私の場合は100〜150万円くらいです。大体の原価がわかっていますので、見積もりからさらに交渉していきますから。
――市民葬なら費用は安くできるとも聞きますが。
明石 市民葬、区民葬が安いというのは間違い。部分的にどこの葬儀社でも同じにしようという協定価格があるだけで、あとはそれぞれの葬儀社が決めます。葬儀社にしてみれば、協定価格で取れなかった部分は当然他に乗せてくるわけで、むしろ高くつくことさえあります。
――明石さんのような葬儀のコンサルタントは増えているのですか。
明石 まだ少ないと思います。しかも、雑誌などでよくコメントしているのは葬儀社出身の方ばかりです。だからお葬式については詳しいけれど、お葬式だけしかわからない。私は葬儀だけでなく、生前も死後も相続全体がわかっていますから、スポットではなくて全般にわたってサポートできます。
――なるほど、強みですね。
明石 コンサルを受けていただいた方には、「危篤から葬儀後まで家族が困らないための必要事項」というファイルをお渡しします。お客様のご要望に合わせてプランニングした内容に即して、葬儀の流れとやるべきことをまとめたものです。葬儀社も決めてありますから、その連絡先を含めて、「危篤になりました」、「死亡しました」というときはこうしてくださいねという行動マニュアルにしました。動転していても、これがあれば大丈夫、書いてある通りに進めればいい。葬儀が終わったら相続の準備なので、相続手続きも踏まえて、葬儀と同時にやるべきこと、ちょっとした相続知識も加えてあります。死亡診断書のコピーは何枚かとっておきましょうとか、葬儀が終わったらすぐ市役所に死亡届の記載事項証明書をとっておいてくださいねとか。あとで取ろうとすると、死亡届の記載事項証明書は登記所まで行かなくてはいけなくなるのです。逆に事前準備として、お元気なうちに、さりげなくご本人に確認しておいていただきたいことも載せています。危篤のときに呼んでほしい人、葬儀に呼んでほしい人、呼んでほしくない人。死亡通知を出す人のリスト。弔辞をお願いしたい人があれば決めておくとか、遺影写真にするお気に入りの写真などもわかっているといいですね。そういった、亡くなったときにまず“どうしよう?”となることをリストアップしています。
――まさに葬儀の完全マニュアルですね。
明石 これさえあれば、喪主があたふたしても家族がこれを見ながら連絡したり、進めたりすることができるのです。訃報の通知のサンプルもあるので、必要事項を埋めてFAXすればいいだけ。喪主のあいさつの文例もあります。喪主は色々な場面であいさつをしなければならず、それがいちばんたいへんなのです。
――エンディングノートと重なる部分もありそうですが。
明石 エンディングノートに中途半端なことが書いてあると、かえってもめる結果になることもあります。葬儀のことを書き遺すなら、ちゃんと葬儀社を決めて見積もりをもらって内容を決めるところまでしておく必要があるのだとわかっていただきたい。家族のことをムシした一方的な意思表示や、おまかせ的な内容ではかえってもめる結果をまねくだけです。葬儀を行うのは家族なのですから。ですから、要望や内容は必ず家族へ伝え、了承を得ておくことが必要です。遺言書や尊厳死の公正証書と合わせて、すべて網羅したエンディングノートでないと、かえって家族を困らせてしまうのです。
――どういったタイミングで準備をしたらいいのでしょうか?
明石 喪主になる方からの相談は、ご両親が元気で全然そんな気配もないというときに、気楽に来ていただきたいですね。いよいよとなると、その時を待っているように感じてしまい、なかなか相談できないものです。笑いながら「まだまだなんだけど」と言えるときに準備をしておくのがいいと思いますよ。一度葬儀社を決めたから終わりということではなく、あとで見直したいというご希望にも対応します。
――いかに死ぬかはいかに生きるかの裏返し。お葬式もライフプランニングの要素の一つなのですね。ありがとうございました。

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インタビュアー 田川えり子

フリーライター・リポーター・インタビュアー 大学卒業後、メーカー勤務を経て、1987年ブラックマンデーのその日からFP会社の事務に従事し始めたことが縁でFP業界の世界に入る。 現在はFP会社での経験を活かし、フリーランスの立場でFPセミナーの企画やセミナーリポート、インタビューなどに携わっている。マネーとキャリアという視点と、人と人との関りを大切にする心をベースに、役立つ情報を提供していきたいと考えている。AFP・キャリアディベロップメントアドバイザー。



インタビュー

“相続と死にじたく”がメインテーマ、相続に特化した女性FP


ファイナンシャル・プランナー(CFPR/1級FP技能士)・ 株式会社TSプランニング 代表取締役・ JAフューネラルアドバイザー・ ハウジングライフ(住生活)プランナー。
建築会社、生命保険会社に勤務した後、2002年にFPとして独立。個別相談やセミナー講師、執筆等の活動を通して、「最期まで幸せなライフプランの作り方」を提唱している。アクティブシニア層の「もめないための資産管理術」 「老い支度・死に支度のマネープラン」を得意とする。不動産、生損保、投資信託、社会保険、介護などFPが関わるあらゆる分野に関して、机上の知識のみならず実務を経験していることが強み。顧客の幸せのために、実務家としてその人生を変えるような関わり方をしたいと、常に100%の力でFP業務に取り組んでいる。

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相沢由佳さん
株式会社TSプランニング
代表取締役

保険や家計相談を得意とするFPが多い中、一貫して相続の分野を中心に活動してきた相沢由佳さん。“死=相続”と語る相沢さんに、これまでの歩みと今後の展望をお聞きします

――相沢さんがFP、相続と出会ったきっかけからおうかがいしたいと思います。
相沢 平成元年に新卒で就職した建築会社で、相続税の対策として土地活用を提案する部署に配属になりました。私は広島の出身で、実家は代々続いた元庄屋の本家でしたが、実は私の生まれる前から、戦後の混乱と民法改正の中で相続問題が起こっていたのです。私の中では幼い頃から相続というのは大変だという漠然とした意識がありました。それが就職してつながったとでもいうのでしょうか。このときから私の中では相続というテーマが生まれたように思います。相続について徹底的に勉強しました。仕事上必要だったとはいえ、建築会社時代に資産税のスペシャリストとして名高い税理士先生お二人にマンツーマンで税務を教えてもらうことができたのは本当にラッキーだったと思います。おかげで自分でも申告書が書けるくらいまで理解を深めることができました。
――転職を考えたのはどうしてですか。
相沢 地主さんたちには、とても可愛がっていただきましたが、その皆さんがそろって「建物はぽんぽん建てられないけど、保険だったらいくらでも付き合ってあげられるのに」と言われるのです。ちょうどその頃FPを知って、お客様の夢を実現するお手伝いをするという考え方が私には合っていると思いました。FPを勉強したかったこともあって、FP資格を取得させてくれる保険会社に転職しました。
――FPになろうと思われたきっかけは?
相沢 CFP資格をとったことです。ただ、建築会社でも保険会社でも、自分が直接扱っている商品だけにこだわらず、常にお客様の幸せを実現するためにお手伝いしようという考えでコンサルをしてきました。いま独立して9年目ですが、私としてはこの22年間、仕事を変えたという意識はありません。名刺の肩書は変わってもやっている仕事の内容はずっと同じ、ずっとFPなのです。
――顧客開拓はどうされていますか。
相沢 すべて“人”が運んできてくれます。そのために心がけていることが二つあります。まず、私は自分がやる仕事の一つ一つが次につながる営業だと考えて、常に全力を注いでいます。講師のお仕事でも、私のセミナーを聞いた方がこの話を誰かに聞かせたいといって次のセミナーのご依頼をいただくケースがとても多いのは、それが伝わっているからだと思います。もう一つは「困ったときに頼れる人になりたい」と思って仕事をしています。私がお客様と顧問契約をするとき、一つだけ条件があるのです。契約しても、定期的に何かサービスをするとか、私からアプローチすることはありません。その代り、あなたが困ったときには必ずご連絡をください。いただいたご連絡に関しては100%お応えします。この点をご理解いただいた上で顧問契約をしています。お客様とは形式的なお付き合いではなく、本当に困ったときにいちばん心強い相談相手でありたい。そういう関係であれば、何年ぶりかであっても、悩んだときに私に相談したいと思ってくださるようです。 年間170万人規模の 相続マーケットがすぐそこに!
――独立FPが顧客を見つけていくうえで、相続という分野はどうでしょう?
相沢 これから相続で困る人がたくさん出てきます。いま1年間に亡くなる方は115万人前後ですが、5〜6年後には年間170万人規模で人が死んでいく時代がおとずれます。死=相続ですから、そこで自分が何かしてあげたい、できるかもしれないという志のある方であれば、いくらでも活躍の場があるはずです。
――相沢さんは“死にじたく”という言葉を講演のテーマに使っておられますね。
相沢 以前は“老いじたく”をテーマにしていましたが、今年から変えました。そろそろ“死”という言葉をきちんと向き合わなくてはいけないのではないでしょうか。自分で自分の死の準備をしなくてはいけない時代がきています。“無縁社会”などと問題視されていますが、これは日本人が自分で選択してきた社会です。地域や家族のつながりを疎ましく思うなど様々な理由で、村社会と大家族社会を自ら捨てて来たのです。自分が選んだのですから、潔く無縁を最後まで全うすべきでしょう。そこでは、今までの死に方と、死に方が変わってくるとはずです。
――“死にじたく”にはたいへんなニーズがあるとお考えですね。
相沢 これから税制が変わって相続税を払う人も増えるでしょう。しかし、死にじたくは納税者ベースの数字ではありません。自分の最期のおさめ方をひとりひとりが決めなくてはいけないということは、死にゆく170万の人が潜在顧客なのです。これからの相続は裾野が広がって、いくらでもビジネスチャンスはあると思います。そのときに自分が時代の要請や人のニーズに耐えられるFPであるか、相続のプロフェッショナルであるかどうかだと思います。
――後輩のFPに対してアドバイスをいただけますか。
相沢 FPはお客様の人生の航海図を書く人です。目的地に到達するまでの間に必要なものがあれば持ってくる、必要な人がいたら連れてきて得意な専門の仕事をしてもらえばいいのです。多くのFPの方は自分自身が航海図のパーツになってしまっているように感じます。目的を達成するために、必要な専門家をアレンジできる人になってほしいと思います。
――これからのご自身の展望についてお聞かせください。
相沢 来春、“死にじたく”の本を出版します。日本で死に方に迷っているたくさんの人に対して、私が死に対して持っている価値観や考え方を届けたいと考えています。誰もが必ず迎える死という問題、実はそんなに悩まなくても超えていけるんだよ、もっとラクなものだよと伝えたい。それを伝えるメッセンジャーになること、それが私の使命であると思っています。
――ありがとうございました。

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インタビュアー 田川えり子

フリーライター・リポーター・インタビュアー 大学卒業後、メーカー勤務を経て、1987年ブラックマンデーのその日からFP会社の事務に従事し始めたことが縁でFP業界の世界に入る。 現在はFP会社での経験を活かし、フリーランスの立場でFPセミナーの企画やセミナーリポート、インタビューなどに携わっている。マネーとキャリアという視点と、人と人との関りを大切にする心をベースに、役立つ情報を提供していきたいと考えている。AFP・キャリアディベロップメントアドバイザー。



特集

速報! 資産家のための23年


平成23年度税制改正大綱が平成22年12月16日にまとまりました。それによると、政府は格差是正をスローガンに資産家や高額所得者に対する増税をはっきりと打ち出しています。この背景には、現行の相続税制が地価高騰などバブル時代の諸事情を考慮して作られた制度であることから、現在では相続税が本来持つ財産の再分配機能が弱まっていたとの見方があります。そこで政府は、現在の地価・経済状況に合わせて相続税を改正し、相続税を納めるご家庭の被相続人の割合を現行の4%から6%程度に増やすことを見込んでいます。人数ベースでは2万人ほど増える方向です。
しかし一方で、政府は贈与税の減税を打ち出し、世代間での早期の財産移転を促しお金を使ってもらうという、景気対策的な意図も明らかにしています。
また法人税は減税され、個人で資産運用するよりも法人化して資産運用するメリットが改めてクローズアップすることになりました。
ただし政権与党の国会運営が立ち行かなくなると、税制改正の法案成立、施行にブレーキがかかる懸念もあります。民主党は現在、いわゆる「ねじれ国会」で法案成立に必要な議決数の確保に苦労している状況です。今後の国会の動向には注意が必要です。
ここでは主に相続税・贈与税の改正にスポットを当てます

1.相続税の改正

相続税の改正は主に@基礎控除の引下げ、A税率の見直し、B死亡保険金の非課税制度の見直し、C未成年者控除等に見直しの4つです。

@基礎控除の引下げ
基礎控除とは、課税対象の相続財産の合計額から控除する金額のことで、相続税がかからない最低限額を示したものです。課税対象の相続財産の合計額とは、相続人それぞれが取得した遺産の課税価格の全員分を集計して求めるものです。
改正前の現行の基礎控除は、5,000万円の定額控除に相続人一人当たり1000万円の法定相続人分を加算することとされていました。したがって法定相続人が配偶者と子2人という、ごく一般的なご家庭であれば、基礎控除額は5000万円+1000万円×3=8000万円になります。
改正では、3000万円の定額控除に相続人一人当たり600万円の法定相続人分を加算することとなります。先ほどの配偶者と子2人の例で新しい基礎控除により計算しなおすと、3000万円+600万円×3=4800万円となります。控除金額は3200万円、割合にして4割減少することになります。
この結果、これまで相続税とは縁のなかった相続人でも相続税の申告が必要になるケースが出てきます。例えば被相続人のご自宅が5000万円クラスの不動産ならば、配偶者と子2人のご家庭では相続税が課税されるということになるわけです。この改正が施行されるのは、平成23年4月1日からです。

A相続税の税率
相続税の税率見直しの大きなトピックは、(ア)税率の刻みが6段階から8段階にされる、(イ)最高税率が50%から55%に引き上げられるという2点です。
税率は次のようになります(右表)。
改正された税率の適用は平成23年4月1日からです。
具体的にどれだけ影響があるか考えてみましょう。例えば相続人1人で3億円の遺産を相続した場合、改正前の税額は次の通りでした。
  (3億円−(基礎控除5000万円+1000万円))×40%−(速算控除1700万円)=7900万円
これが相続税の基礎控除・税率の改正により、次のように増税となります。
  (3億円−(基礎控除3000万円+600万円))×45%−(速算控除2700万円)=9180万円
税額が1280万円アップすることになるわけです。

B死亡保険金の非課税制度の見直し
改正前の制度では、死亡保険金の非課税限度額は500万円×法定相続人とされていましたが、改正後は500万円×(法定相続人のうち未成年者、障害者、相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた相続人に限る)とされます。
つまり、健常な成年の法定相続人のうち被相続人と生計を一にしていない相続人は、非課税枠の計算から除外されることになります。考え方としては「相続人の生活の安定」を図る制度の趣旨を踏まえて、非課税制度の適用範囲を厳格にしようというものです。
相続人各人の具体的な非課税制度を適用した後の課税対象額の計算は、次の計算式によります(現行制度)。


[その相続人が受け取った保険金]
- 500万円×5×
その相続人が受け取った保険金
すべての相続人が受け取った保険金の合計額
「その相続人が受け取った保険金」−500万円×5×
例えば保険金3000万円を被相続人と生計を一にしていた配偶者と独立した成人の子4人が均等に受け取ったとした場合で改正前なら、課税対象額の計算は次の通りです。
   600万円−500万円×5人×600万円÷3000万円=100万円
改正後では、非課税の対象となるのは生計を一にしていた配偶者のみとなります。独立した成人の子は、非課税の計算の対象外となるわけです。適用は平成23年4月1日からです。

C未成年者控除・障害者控除の見直し
相続人が未成年者やハンディキャップのある障害者の場合には、相続税額から所定の計算に基づく税額控除制度が適用できます。今回の見直しでは、前回の昭和63年の改正以降、現在までの物価動向を踏まえて次の表のように見直すこととされました。適用は平成23年4月1日からです。

2、贈与税の改正
贈与税の主な改正点は、@税率の引下げ、A相続時精算課税制度の適用範囲を孫まで拡充の2点です。

@税率の引下げ
贈与税は、相続税を逃れる道をふさぐ機能を持つ税金とされています。このため、財産の金額が基礎控除後1000万円超の金額から、50%税率が適用されています。相続税の税率に比べて低い金額でも高い税率が適用されるような適用税率の刻みになっているのです。
今回の税制改正では、若年世代への財産の早期移転を促進することが政策課題に掲げられ、(ア)一般の税率のうち1000万円超に適用される税率が3段階とされ緩和されるほか、(イ)直系尊属から贈与を受けた場合の税率は、一般よりもさらに緩和されます。税率はこのように二段構えとなるのです。
具体的な税率・減税額は次のようになります(左、下表)。

A相続時精算課税制度の見直し
相続時精算課税制度とは、現行制度上、親と子(推定相続人)の間で贈与について、納税者の選択で特別控除により2500万円まで贈与税が払わずに済むという制度です。ただし贈与する親には満65歳以上という年齢制限があるほか、贈与を受ける子供にも満20歳以上であることが適用の条件になっています。そのほかの具体的な制度の内容は次の通りです。
◎贈与する父・母ごとに、110万円の基礎控除をする通常の暦年課税制度か、相続時精算課税制度かを選択可能。
◎一旦、相続時精算課税制度を選択すると、贈与した父または母からの贈与には、暦年課税制度は適用不可。
◎特別控除2,500万円を超える贈与については、一律20%の贈与税が課税。
◎相続発生時に贈与財産と相続財産とを合算し相続税を計算しなおし、すでに支払った贈与税相当額がある場合には控除。
今回の改正では、親の年齢制限を65歳から60歳に引下げ、贈与を受ける対象者に20歳以上の孫を含めることとされました。適用は平成23年1月1日からの予定です。
この改正にともない、相続時精算課税制度の特例である「住宅取得等資金の贈与の特例(住宅資金の贈与に限って贈与する親の年齢制限を撤廃する特例)」にも贈与を受ける対象者に孫が含められるものと見られます。
なお、「住宅取得等資金の贈与の非課税制度(23年は1000万円まで)」については、贈与を受ける対象者がすでに孫まで、含まれています。今回の改正では、住宅を建てるための土地を取得する資金贈与を建物の資金贈与に先立って行った場合にも、一定の範囲でこの1000万円までの非課税制度が利用できるよう条件が緩和されます。 (編集室 遠藤 純一)



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