Appoggio vol.21 2011 summer
「日本のどこに住むのが幸せか」
〜震災後の不動産価値を考える
CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1960年東京生まれ。学習院大学経済学部経営学科卒。大手住宅メーカー、外資系生命保険会社、不動産コンサルティング会社を経て、1996年に財営コンサルティング株式会社を設立。不動産や金融の実務経験の中で培った知識とノウハウを活かし、「不動産と相続」に関わる分野に特化したサービスを提供している。
独自のデータ分析と歴史研究をベースに、鑑定理論の手法を用いて、山崎流資産価値論を展開。2007年の著書『東京のどこに住むのが幸せか』では、当時人気の高かった湾岸地域の地震リスクを的確に予言している。
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東日本大震災を経て、人々の不動産に対する見方や人生設計、資産設計が
大きく変わろうとしている。湾岸地域のリスクを明言していた今山崎隆氏に、
これからの資産価値と日本人の生き方を問う
江里口 3月の震災で、山崎さんが著書『東京のどこに住むのが幸せか』で警告しておられた通りのことが起きましたね。
山崎 埋立地はやばいぞ、液状化するぞ、電気とかインフラが全部止まってしまうぞと、新浦安と豊洲を名指しで予言していた。その通りになりましたね。
江里口 いまや予言者ですね。今日は、「日本のどこに住むのが幸せか」という予言をお願いできますか。
山崎 震災を経験して、安全というものに資産価値がある、安全でないところにそもそも資産価値も何もないという考え方になってきました。
江里口 原発から100キロ以上離れないとダメですね。
山崎 アメリカの基準に基づくと80キロ=50マイル。放射能の拡散状況をみると、結構これが当たっています。ここで世間をあおるつもりはないけれど、今回のフクシマの事故で今まで取り上げられなかった原発や放射能の問題がいろいろと明らかになりました。
江里口 少なくとも浜岡原発が停止して、ほっとしましたね。
山崎 浜岡であれが起こったら東京は壊滅です。
江里口 結果、日本沈没を免れました。
山崎 私は原発反対論者でも賛成でもない。ケースバイケースで考えないといけないと思います。だけど、よく考えたら、原発は自爆用の核兵器ですよ。核兵器なんてなくても、どこの国でも日本を簡単に核攻撃できる。通常型のミサイルで原発を狙えばいい。
江里口 テロリストに奪われる危険もありますね。軍が防御しているわけではないから、ジープ1台でテロリスト5人くらいが機関銃を持って行けば簡単に侵入できるでしょう。
山崎 日本海側の原発なんか、北朝鮮から上陸用舟艇で闇夜にまぎれて上陸すれば簡単。1個中隊で原発ひとつ占拠できますよ。
江里口 まるでスパイ映画ですね。
●セカンドハウスを持って遊牧民に
山崎 とにかくはっきりしたのは、埋立地はやめましょう。地盤の弱いところはやめましょう。原発から80キロ圏内はやめましょう。そうすると、住む場所がなくなってくるかも。
江里口良さそうな場所は既に過密化しています。ビルの建て替えしかないのかな?
山崎 あとはセカンドハウスのすすめですね。原発から80キロ圏内に住むなということではなくて、80キロ圏内に住んでいる人は万が一があるからセカンドハウスを持とう。こういう問題解決。
江里口 そういえば、今回、親の家を売らなければよかったというお客さんがいました。仙台にマンションを買って住んでいたんです。親の名古屋の家を売って頭金にしてローンを半分にしたんだけど、地震で住めないから実家に帰ろうとしても家がない。売らずにセカンドハウスにしていればよかったのですね。
山崎 これからは家余りなのだから、数百万もあればボロ家は買える。早めに老後のことを考えて先に買ってしまうとか。今までのライフプランの考え方が変わりそうです。
江里口 なにも都心に4000万も5000万も出して生涯ローンを背負わなくても、適当に中古のマンションを買って、いつでもそれは転売、貸せるようにすればいい。田舎なら買わなくても借りたらいいんです。月3万くらい出せば立派な家が借りられる。5万も出したら邸宅ですよ。
山崎 日本人の今までのドメスティックな地域密着型の人生、地域と心中するみたいな生き方を見直さないといけないですね。
江里口 もし山崎さんが地震で被災して、家を失ってしまったらどうします? そこに残って、避難所で暮らしますか。
山崎 私だったら別のところに移りますよ。どこでも仕事はできますから。要は、その場所に密着した生き方なのです。そこにいるから収入がある。薬剤師みたいに資格で仕事をしていたり、すし屋の板前さんとか手に職系の仕事だったら、仕事がある場所に移りやすいでしょう。
江里口 日本人はもともと農耕民族ですからね。これからは仕事のあるところにいつでも移動できるような生き方ができないと辛いでしょう。
山崎 みんなで遊牧民になろう。遊牧民宣言ですね。
●歴史と地政学に学ぶ安全性
江里口 この地震と放射能で、マイホームも含めて、山崎流資産価値とはどうなんですか。
山崎 昔のセオリー通りに戻ろうということですね。埋立地に住まないというのはもともと常識だった。そういうことも含めて、これからの不動産のキーワードは安全性なのです。
江里口 昔は人類の知恵で、安全なところに人が住んできた。だから、文化が栄えて、年寄りも子どももいて、街が繁栄したわけです。いま、昔のセオリーを知るにはどうしたらいいですか。
山崎 ロジックをきちんと押さえながら、何が事実なのかを知ることです。いちばん身近な例が歴史です。不動産のことを知りたければ、リクルートの住宅雑誌なんか読まなくても、江戸時代の歴史を調べたらいい。どこに武士が住み、どこに町人が暮らしていたか。千代田区や港区の高級住宅街はかつて武家屋敷が建ち並んでいたエリアなのです。歴史に関心を持つことがすべての原点のような気がします。歴史、地政学、地理など、一種の社会学ですね。社会学に対する関心、教養を持っていれば、人生の選択あるいは不動産の選択を間違えないような気がするんですよ。リクルートの雑誌に載っているような住宅評論家の言うことを鵜呑みにするから、選択を間違えるのです。自分で考えずにお手軽にというのではダメ。
江里口 そうすると不動産の基礎は歴史にありですね。
山崎 それと地政学ですよ。
江里口 昔から三角州のところが川が氾濫を繰り返していたのに、そこに防波堤を作って、田んぼを耕して田んぼのあとが畑になって、人が住むようになった。災害が起きて、改めてそこがどういう場所だったか思い知るわけです。
山崎 それと、人が住むということの一番の理由は仕事です。そこで稼げないと住めません。となると地場産業があるか通勤圏かのどちらか。やはり街を作るのは地場産業だと思います。そういうことも含めて地政学です。たとえば自動車メーカーが主力工場を関東や東海から九州に移しています。元の場所では税収が落ちてたいへんだと言っていますが、産業が衰退していく地域は不動産の価値も望めません。
江里口 地政学的に、自然環境だけでなく産業の動向も含めて考えるのですね。
山崎 いま沖縄の不動産がブームになっています。原発がない、地震がない、津波がない。那覇などは意外と賃料が高い。それでいて、いくら高くても5000万もあればかなりいいものが買えるから、それをぱっと出せる東京の金持ちが買っています。なぜ彼らがそうするかというと、地政学的なものの見方をしているからです。いま那覇空港はハブ空港化を図っています。ものすごいコンテナ置き場を作って、駐車場も拡大している。彼らは沖縄が発展するとみているのです。なぜなら、中国や東南アジアに近くて、アジアの発展とセットになっているから。ただし、日米安保条約が揺らいで米軍が撤退したら、すぐに中国が侵出してくるかもしれない。賢い人はその情報を得たり、そういうことがあり得ると思ったら、すぐ売ってしまうでしょう。不動産を地政学的に、戦略的に見ているのです。財産をつくる人というのはみんなそうですよ。視野が広い。
江里口 本物の富裕層ですね。彼らは何を考えてどう動いているのですか。
山崎 根っこは歴史ですよ。彼らは歴史や国際情勢に詳しい。情報源が全然違います。
江里口 一般大衆は情報源をどこに求めたらいいのですか。
山崎 「本を読め」という話でしょうね。テレビを見るな。リクルートを代表とする雑誌を読むな。ああいうのは大手不動産会社から広告料をもらっている連中が書いている。豊洲が売れないと困るわけです。そういう意味で日本はかなり言論統制が進んでいると思います。原発報道もそうだし、経済の報道もそうです。
江里口 いまのマスコミはテレビも新聞もマネー型大政翼賛会でしょう。3月11日から原発報道の大本営発表が始まったんですよ。逆にそのことで、国民にわかってしまった。
山崎 マスコミが本当に信じられなくなった。「みんなで自分の頭で考えましょう」ということですね。確かな情報源としては、私は読書だけでいい。新聞はざっと目を通して何が起きているかを知るだけです。最近の日本人は本を読まなくなった。どんどん“バカ”にされているのです。大衆をいかに“バカ”にするかが欧米の植民地政策の一つですからね。
●鉄道の歴史から安全な場所を知る
江里口 歴史、地政学を学ぶには、具体的にどんな本を読んだらいいのですか。
山崎 直接かかわるのは経済史や産業史です。私は最近、鉄道の歴史を片っ端から読んでいます。驚嘆したのは、明治期に主要なJRの路線は出来上がっていること。不動産の安全性についてある種の法則をいうのならば、少なくとも戦前までにあった鉄道付近の不動産は安全ですよ。それ以降は、どんどん埋め立てをして、変なところにも鉄道ができています。まさに新浦安なんて京葉線でしょう。戦後の高度成長と土木技術の進歩で、海岸線や危ない土地が見えなくなりました。戦前はそれが露出した状態だから、そのときちゃんと土地があったところに鉄道を敷いた。今のJRはそういうところを走っているわけです。
江里口 なるほど。鉄道の歴史を追いかけていくと安全な場所がわかると。
山崎 日本の鉄道は、当初は、日清・日露戦争用に作られたのです。まさに兵站です。鉄道は東北や関東からの兵隊を大陸に運ぶ重要な役割を担っていました。日本海側の博多や舞鶴まで確実に輸送しなくてはいけない。明治までに成立した鉄道のラインを見ていると、ここは安全だなといういい場所を通っています。田んぼや川、沼地などは避けたのです。
江里口 非常にわかりやすいですね。鉄道が崩れたら兵站が止まってしまう。
山崎 鉄道が止まったら戦争に負けるということだから、ものすごく切迫した話です。あの時代は飛行機がないから、艦砲射撃からのリスクを考えて、わざとトンネルを通したり、山側を通したりもしている。やっぱり歴史ですね。
江里口 不動産の原点は歴史と地政学に学ぶ。日本のどこに住むかは、戦前の鉄道路線を参考にしようということですね。
山崎 不動産の価値は、結局、そこに住んでいる人の価値なのです。みんな読書をして、マスコミから自分の頭脳を守りましょう。そうすれば、自ずと埋立地を買うようなことはなくなると思いますよ。どこに住むべきか、自分の頭でしっかり考えてください。
<主な著書>
『住宅ローンを借りる前に読む本 〜地獄へ落ちないための23の知恵〜』ファーストプレス 2009年刊
『何もしないでお金持ちになる方法 ― 投資なんかやめなさい!』講談社 2009年刊
『お金に困らなくなる マイホームの買い方・つかい方』ダイヤモンド社 2008年刊
『エリア別データ2万件の定量分析による東京マンション価値予測』ダイヤモンド社 2008年刊
『東京のどこに住むのが幸せか』講談社 2007年刊行
『不動産でハッピー・リッチになる方法』ダイヤモンド社 2005年刊
『遺言書は書いてはいけない!』ダイヤモンド社 2001年刊
『マイホームは「貸せる物件を」買いなさい!』ダイヤモンド社 2000年刊
『不滅の土地活用』ダイヤモンド社 1995年刊
話題のフェイスブック(Face book)、
ビジネス活用の可能性は?
総合電機メーカー系ソフトハウスに勤務後、フリーのシステムエンジニア、IT系コンサルタントなどを経て、2000年3月に有限会社サーブを設立。
IT&インターネットを活用した集客・接客・販売促進の、支援およびコンサルティングサービスを提供。
買い物情報のクチコミサイト「買物じょうず」の企画・制作・システム開発・運営、ネットショップの立ち上げや運営代行、アフィリエイトサイト運営といった実務を通して得られたノウハウ等をもとに、インターネットサービスのプロデュースも行う。
これまでお付き合いさせていただいたオンラインショップは1,000店超。
著書に、『顧客がドンドン集まるホームページの作り方』(2005年ソシム刊)、『最新版 これがバカ売れネットショップだ!』(2004年翔泳社刊)、『バカ売れオンラインショップの作り方(2004年翔泳社刊)など。雑誌やニュースサイトなどへの執筆多数。
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いまや世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)となったフェイスブック。
個人利用が主体のミクシィやツイッターとまったく異なる、フェイスブックならではの特徴、仕掛けに迫る。
――いまフェイスブックが急激に広がってきています。フェイスブック誕生までのストーリーについては、映画『ソーシャル・ネットワーク』をご覧になった方も多いと思います。まず、フェイスブックとは何か、その本質についてお聞きしたいと思います。いま日本でどれくらいのユーザーがいるのでしょう?
山田 2011年4月現在、フェイスブックによるとユーザー数が360万人だそうです。日本語版ができたのは2008年でしたが、映画のプロモーションの影響もあって昨年くらいから一気に増えているようです。
――どんな人が利用しているのか、ミクシィと比較して違いなどはあるのですか。
山田 年齢層としては30代から40代の男性が多いです。ある会社が調べたところによると、年収700万円以上の人が3分の1で、ミクシィに比べると高いそうです。ミクシィは20代が多く、趣味の世界での利用が多い。フェイスブックは実名制なので、ある程度自分を出すことに自信がある人でないとハードルが高いのかもしれません。
――フェイスブックのプロフィールでは生年月日など個人情報を入力するようになっていますが、そういうことは公開すべきなのですか?
山田 フェイスブックでは個人情報を入力しますが、それを誰に対して公開するか、自分で決められます。生年月日については、非公開ににしたり、月日だけ公開するという指定ができます。ミクシィでは嘘をついてアプローチする人がいるかもしれませんが、フェイスブックではやりづらい。実際に知っている人との交流が主体なのですべてを公開する必要はないと思います。
――しっかり個人情報を登録した人しか入って来られない世界だということはわかりました。なぜフェイスブックでは嘘がつけないのですか。
山田 嘘をついて偽名で入ることもできます。ただ、それでは広がらない。みんなが実名を名乗って、顔写真を出しているところに、仮面をかぶって出て行っても相手にされません。フェイスブックでは、「あなたの友達じゃないですか」という人がどんどんリストアップされて出てきて広がっていきます。そこで偽名を使っていると、相手に自分だとわかってもらえない。個人情報公開に関しては、「自分が相手にどう思われたいか?」を基準にすると良いでしょう。何も公開しなければ不安に思われるかもしれませんし、特殊な趣味を載せておくと同好の士が寄って来ます(笑)。顔写真も入れなくてもいいですが、写真がないと、「友達リクエスト」をしてもスルーされることが多いです。
二つのフェイスブック
〜個人ページとフェイスブックページ
――ツイッターやミクシィは広まりましたが、ビジネス利用は少ないようです。山田さんはフェイスブックはビジネス活用の可能性が大きいと言っておられますね。実際に知っている人と交流することが中心だとしたら、どのようにビジネスに活用できるのでしょう?
山田 フェイスブックには、個人ページとフェイスブックページと2種類あります。フェイスブックページは当初、ファンページと呼ばれていました。ファンクラブの“ファン”です。個人
ページは情報を誰に公開するかを限定できますが、フェイスブックページのほうは全部オープンです。ですから、個人ページではあくまでもプライベートな友達との交流をして、知らない人に情報発信をしてファンを増やしていくのはフェイスブックページと使い分けるのです。ビジネスに利用するのはファンページのほうです。
――1人の人が個人ページとフェイスブックページと二つ持てるのですか。
山田 ルールとして個人ページは当然1人一つですが、ファンページはいくつ作ってもいいし、複数人で管理してもいい。あるメーカーは製品のジャンルごとにフェイスブックページを作っています。なぜかというと、意外にグーグルに強いのです。すべてにオープンなので、検索エンジンの対象になっていて、同じキーワードでフェイスブックページとブログがヒットした場合、フェイスブックページのほうが上位にあがってきます。実際に、私の“サーブ”のフェイスブックページは、グーグルで「ネット活用 surv」と検索すると、第1位にあがります。
――ホームページを立ち上げるのと同じですね。ホームページが要らなくなるのでは?
山田 そういう人もいますが、フェイスブックページと本体のホームページでは役割が違います。フェイスブックページの目的はあくまでもコミュニケーションなのです。質問があれば答えるとか、情報発信をしてそれにレスがきたら答える。
建前はソーシャルなお付き合いです。たとえて言うと、パーティ会場だと思ってください。商工会の会合や業界のパーティ、相続支援ネットの交流会のようなソーシャルな世界なのです。そんな場でガンガン売り込みをしたら嫌われてしまいますね。それがフェイスブック。「興味があったら、うちのホームページ来てよ」と。自社のホームページに誘導すればいいのです。ホームページでは、「こういうものがありますが、いかがですか」と好きなだけ営業活動できます。
――フェイスブックページで自社の商品やサービスを紹介してはいけないのですか。
山田 いいえ。紹介しても問題ありません。ただ、そればかりだとつまらないから誰も来なくなるだけです。
広告媒体としてのフェイスブック
――では、フェイスブックページからビジネスにつなげるにはどうしたらいいのですか。
山田 何か質問があったときに、親切にいろいろレスしてあげる。その対応の様子をみんなが見ていて、「ここの会社は信頼できる」と思ってくれて、どんな会社だろうと本体のホームページへやってくるわけです。
――つまり、フェイスブックページに来てくれる人を増やして、そこから自社ホームページに誘導してビジネスにつなげるということですね。
山田 フェイスブックには「いいね」というボタンがあります。この「いいね」を使って、広告費ゼロで広告と同じ効果が得られるのです。私に100人友達がいて、私が相続支援ネットのフェイスブックページに対して「いいね」を押したとします。そうすると、友達100人の個人ページに「山田が相続支援ネットに対していいねと言いました」と出るのです。その100人の中に、相続に関心のある人がいたら、相続支援ネットのフェイスブックページにやってくるでしょう。潜在需要の掘り起こしです。フェイスブックページに対して「いいね」を押した人を「ファン」と言いますが、いま大手企業がフェイスブックページのファンを増やすことにやっきになっています。1回「いいね」を押すと、解除するまで、フェイスブックページから発信した情報がその都度、ファンである個人のページに出てくるのです。その人が「いや」というまでずっと。
――それはすごいですね。
山田 毎回、情報が自分のページに表示されるのですが、そのときに宣伝ばかりだと嫌だとなってしまう。そうなると元の木阿弥。コミュニケションを重視したほうがいいというのはそこなのです。
――ビジネス利用では、いかにフェイスブックページのファンを増やすかがカギになるのですね。効率的にファンを増やす手段はあるのですか。
山田 フェイスブックを利用した広告ができます。たとえば、相続に困っている人は当然、グーグルで相談できるところを探します。ニーズに合ったものが、検索結果の上位や広告として出てきます。しかし、世の中には相続問題が顕在化はしていないけれど、潜在的に不安な人は山ほどいますね。そういう人に対してグーグルは何もできない。なぜならグーグルは検索して初めて動くシステムだからです。需要が本人の中で顕在化していない限り、グーグルは手も足もでない。ところが、フェイスブックを利用すると、相続の潜在顧客層である40代の人だけに広告を出すこともできます。その点でグーグルにとってフェイスブックは脅威なのです。
――登録している人の属性を把握できているので、ターゲットを絞った広告が簡単に打てるのですね。広告費はどれくらいかかるものなのですか。
山田 現在は、1クリック百円くらいです。広告くさくない内容で、そこから「詳しくはこちらに」と自分のぺージに誘導します。一気にファンを増やしたいなら広告が必要です。ただ、ファンになってくれたら、あとはタダ。1クリックで全員に「イベント情報」など配信できます。DMがその都度、費用がかかるのと比べて、とても効率がいいです。広告予算は自分で決められますから、たとえば1万円分広告費を使って、どれくらいファンが増えたか、効果を計ってみるといいでしょう。年齢や住んでいるところ、性別でターゲットを絞っていけます。
――広告媒体としても魅力があることはわかりました。広告を出さない場合はどうですか。
山田 じっくりファンを増やそうということなら、友達や、友達の友達を通じてじわじわ増えていきます。ある人が、フェイスブックページでアクションをおこすと、それがその友達や、友達の友達にも伝わります。そのくり返しで広がっていくのがフェイスブックの特徴なのです。
――本来のソーシャルネットワークとしての性格で、自然とビジネスにつながることも期待できるのですね。
これからの士業ビジネスには
必須アイテムに
――最後に、税理士をはじめとする士業にとって活用の可能性はどうですか。
山田 士業の先生方は個人の名前で営業をしています。フェイスブックは信頼獲得のツールですから、これを活用しない手はありません。もちろん、ネットではなく現実の世界で知り合いの輪を広げて紹介をしてもらうのがいちばんです。だけど、すぐにそんなコネはできませんから、若い人や新たに参入してきた人は困っています。そういう人はネットの世界を活用したらいいのです。そのときに、ドメインがないとかフェイスブックがないというと置いていかれてしまいます。ただ、個人ページでは個人情報の問題がありますから、士業の先生方にこそ、個人ページとは別にフェイスブックページを立ち上げてほしいのです。検索エンジン対策としても有効なので、ぜひフェイスブックページを作って、ビジネスに活用してください。
――言い換えると、いまではドメインがないと本当に商売をやっているのかと疑われますが、あと1〜2年もしたら「あなた、フェイスブックページないの?」と笑われるようになるかもしれませんね。
山田 少なくとも士業やコンサルタントはそうでしょうね。
――ドメインの次にフェイスブックページを作ろうということですね。
山田 フェイスブックの利用者は増え続けていますが、実態は個人ページで友達を探して楽しんでいる段階の人が多いのです。それで飽きてくると「つまらない」と言いますが、それは当然です。自分の友達の中で交流しているだけですから。
一方、現実には人脈を広げたり顧客開拓につなげようと、異業種交流会や様々な集まりに出かけています。フェイスブックページを作れば、それがフェイスブック上でできるようになる。ミクシィやブログと違って全員が実名ですから、リアルの世界で名刺交換をするのと同じことがそのままネット上でできます。交通費と移動時間が節約できる、まさにネット上の交流の場なのです。リアルの世界で交流できる範囲は時間的にも地理的にも限られていますから、個人営業で自分を売る士業の先生方にとっては、フェイスブックは強い見方になると思います。
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インタビュアー 田川えり子
フリーライター・リポーター・インタビュアー
大学卒業後、メーカー勤務を経て、1987年ブラックマンデーのその日からFP会社の事務に従事し始めたことが縁でFP業界の世界に入る。
現在はFP会社での経験を活かし、フリーランスの立場でFPセミナーの企画やセミナーリポート、インタビューなどに携わっている。マネーとキャリアという視点と、人と人との関りを大切にする心をベースに、役立つ情報を提供していきたいと考えている。AFP・キャリアディベロップメントアドバイザー。
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働きやすい職場環境づくりが会社成長の原動力
特定社会保険労務士、産業カウンセラー
東京都世田谷区生まれ。日本女子大学文学部日本文学科卒業。日本ヒューレット・パッカード梶i会社分割のためアジレント・テクノロジー鰍ノ所属変更)に勤務した後、自由民主党所属参議院議員の公設第二秘書に転職。
2004年11月、社会保険労務士試験に合格。議員秘書として勤務しながら開業準備を続け、2006年2月、なぎさ社会保険労務士事務所を開設、社会保険労務士として独立した。
2007年に特定社会保険労務士資格、2011年に産業カウンセラー資格をそれぞれ取得。
会社の発展のためには従業員の働くモチベーションが重要だという考えのもと、経営者と従業員、双方の“話を聞く”コンサルタントとして、問題解決やトラブル防止、よりよい職場環境づくりを目指して活動している。
開業当初からインターネットを活用し、なぎさ社会保険労務士事務所のホームページはSEO対策をしていないにもかかわらず、Yahoo、Googleなど検索エンジンで「東京・女性・社労士」のキーワード検索でトップに出る。
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働く人の視点を忘れず、コミュニケーションを通じて経営者と従業員の架け橋となる
人事・労務のコンサルタント、新しい社会保険労務士の姿に迫る。
外資系OL、議員秘書を経て社労士に
――社労士を開業されてどれくらいですか?
大島 2005年に開業して6年です。外資系の計測器メーカーに勤めた後、国会議員の公設秘書の仕事に就いて、そのときに社会保険労務士の資格を取りました。
――社労士になられたきっかけは?
大島 20代半ばを過ぎた頃、すごく焦っていました。営業アシスタントをしていたとき、営業の方は若いアシスタントを望んでいるように思えて、このままではいけない気がしました。直接、社労士につながったわけではないのですが、若さがなくなる前に別の能力を身に付けたいと思ったことが、転機になりました。
――そこで転職を?
大島 そのときは社内でのキャリアアップを考え、公募制度を利用してITの部署に異動しました。社内で使用しているアプリケーションのサポートの仕事でした。本国のアメリカでサーバーの管理をしていたので、サーバーエラーがあると、夜中の1時とか朝の4時に電話が英語でかかってくるのです。そんな状態ですから本当に体力的にも精神的にも辛くて、このままここにいてもだめだなぁと思って、1年半くらいで辞めました。そこへ議員秘書の話があって就職しました。
――具体的に社労士になろうと思われたのは、いつごろですか。
大島 政治家の秘書になったものの、実は政治や法律に疎かったのです。せっかく政治の世界にいるのだから、何か法律の勉強をしようと思いました。ちょうど年金未納問題が国会でクローズアップされていた時期で、社労士を受検するという友人と一緒に勉強を始めたのがきっかけですね。最初は資格がとれたらいいなぁくらいの気持ちだったのですが、労務管理について勉強したとき、自分自身の職場での経験と重なって、意識が変わりました。やる気があって積極的な新人が、周りに育ててあげる人がいないために自信を持てないまま仕事をしていたり、他の人よりずっと頑張って成果をだしている後輩がコミュニケーションのすれ違いで、その努力や成果を周囲に伝えられなかったりしたこと。人が辞めていくのに補充されず、どんどん仕事の負担が増えて追い詰められていったこと。どの職場にいるときにどんな気持ちでいたか、どうして異動したのか、退職したのか等、自分自身のこともいろいろ思い出しました。私が働きながら悩んでいたことについて、社労士になることで答えが出せるかもしれないと思い、労務に関する仕事がしたいと心が決まりました。ここからは勉強にのめりこんで、秘書の仕事をしながら1年ほど専門学校の社労士講座に通って合格しました。
「話を聞くこと」を大事にしたい
――社労士さんの仕事というと社会保険の事務をイメージしますが、他にどんな業務をされていますか。
大島 労務相談があります。中小企業が社労士と契約するきっかけは、社員数が増えて社内で事務手続きをこなすのがたいへんだということもありますが、会社が大きくなると、様々なトラブルが起きやすくなるのです。会社が小さいうちは、みんな社長が好きで集まってきたような人たちですから、少しくらい勤務時間が長かろうがかまわない。ところが、大きくなってくると会社に合わない人も出てきて、トラブルが起こります。そういうとき、社労士が間に入って解決策を提案したりします。
――社労士は経営者か労働者か、どちらの立場なのですか。
大島 社労士は労働者の味方だと思っておられる人が多いようですが、社労士が労働者だけの側ということはあり得ません。私たちは会社からお金をもらっていますから。でも、会社側のニーズばかり聞いていては、良い方向には進めません。従業員さんの話も一生懸命聞いてあげて、会社と折り合いをつけて、長く良い関係を続けていくことが、会社にとっても結局はプラスに働くのです。いちばんいいのは、従業員が「この会社で働きたい、社長や同僚に嫌われたくない、ずっとここにいたい」と思えること。そうすれば、トラブルも起こさないし、仕事へのモチベーションが高まります。そういう環境づくりが重要だと思います。
――まさに人事・労務問題のコンサルタントでもあるのですね。今後の抱負は?
大島 独立している以上、お客様をもっと増やしていきたいです。ただ、私はすべてのお客様のところに自分で行ってお話したい。当然、事務所内の作業はスタッフに任せますが、人を雇って担当を付けることは考えていません。少し変な言い方かもしれませんが、お客様は私のことが好きで契約してくれたと思うのです。私がお引き受けする仕事は、手続きや給与計算業務が主体です。書類や給与計算で社労士がやることは決まっていて、業務そのもので個性が出る仕事ではありません。だからこそ私が直接行ってお会いしないと、せっかく私と契約してくれた意味がないと思います。労務相談や規程づくりは定型業務ではありませんが、私は、どういうふうにしたら絶対大丈夫なんて言えないし、他の社労士が知らなくて、私だけが知っている魔法みたいな解決策を持っているわけではないのです。だから、私は「話を聞くこと」を大事に頑張りたい。お客様に話しやすいと思っていただければ、たくさん話を聞かせていただくことができ、よりよい解決策をお客様と一緒に見つけていくことができると思います。個性が出る仕事ではないと言いましたが、私の独自性を出せるとしたら、接し方が違いのところだと思います。
――相続についてはどうですか。
大島 私のお客様はまだ若い方が多く、相続や事業承継に関わった経験はありません。将来的には、もちろん視野に入れておくべきことです。経営者に万一のことがあったとき、会社の理念、方針などを後継者に伝えて、円滑に引き継いでいけるよう、力になりたいですね。社会保険や労務問題という切り口からではありますが、「話を聞くこと」を通じて、幅広く中小企業の経営コンサルに関わっていきたいと思います。
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インタビュアー 田川えり子
フリーライター・リポーター・インタビュアー
大学卒業後、メーカー勤務を経て、1987年ブラックマンデーのその日からFP会社の事務に従事し始めたことが縁でFP業界の世界に入る。
現在はFP会社での経験を活かし、フリーランスの立場でFPセミナーの企画やセミナーリポート、インタビューなどに携わっている。マネーとキャリアという視点と、人と人との関りを大切にする心をベースに、役立つ情報を提供していきたいと考えている。AFP・キャリアディベロップメントアドバイザー。
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データで見る相続周辺情報
相続税の最新トラブル事例集
1、老人ホーム入所と小規模宅地の評価減
被相続人が自宅を離れて老人ホームに入居していた場合、被相続人保有の自宅の敷地が小規模宅地の評価減(以下本件特例といいます。)の適用を受けられる対象に入ってくるかどうかでトラブルになるケースが後を絶たないようです。最新の裁決事例でも、「介護型の有料老人ホーム」に被相続人が入所していたケースで、争いとなった事例が出ています(平成22年6月11日)。
入口となる条件
本件特例の対象となる被相続人の住宅の敷地は、次のような条件を満たす必要があります。
@対象となる居住用宅地は、相続・遺贈で取得したものであること
A対象となる居住用宅地は、相続開始直前において、被相続人や被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されたものであること
このうち、住宅を空き家にして被相続人が老人ホームに入所していた場合に、問題となるのがAの相続開始直前において被相続人の「居住の用に供されていた」といえるかどうかという点です。
国税庁の質疑応答事例集
国税庁は、質疑応答事例で「被相続人が居住していた建物を離れて老人ホームに入所したような場合には、一般的には、それに伴い被相続人の生活の拠点も移転したものと考えられます」と基本的な考え方を示しています。ただし必ずしも生活の拠点を老人ホームに移転したことにはならない場合もあるとして、次に掲げる状況が客観的に認められるときには、被相続人が居住していた建物の敷地は、相続開始の直前においてもなお被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとして差し支えない、として、4つの要件を挙げています。
(1) 被相続人の身体又は精神上の理由により介護を受ける必要があるため、老人ホームへ入所することとなったものと認められること。
(2) 被相続人がいつでも生活できるようその建物の維持管理が行われていたこと。
(3) 入所後あらたにその建物を他の者の居住の用その他の用に供していた事実がないこと。
(4) その老人ホームは、被相続人が入所するために被相続人又はその親族によって所有権が取得され、あるいは終身利用権が取得されたものでないこと。
(1)については「特別養護老人ホームの入所者については、その施設の性格を踏まえれば、介護を受ける必要がある者に当たるものとして差し支えないものと考えられます。なお、その他の老人ホームの入所者については、入所時の状況に基づき判断します。」という注意書きがつけられています(国税庁HPより引用)。
なんだか被相続人が特別養護老人ホームに入所した場合なら、自宅が空き家であっても、その敷地には小規模宅地の評価減の適用が認められるようにも受け取れます。
問題は終身利用権の有無なのか?
そこで「特別養護老人ホームの入所者の自宅の敷地には本件特例適用が認められているのに、介護型老人ホームは終身利用権の取得があることをもって、その入所者の自宅の敷地に本件特例適用が認められないのはおかしい」と主張する相続人が現れました。これが前記最新裁決事例の不服審査の請求人である相続人です。というのも「特別養護老人ホームは途中で施設から退去をもとめられないという点で終身利用権が与えられているといってよいため、特別養護老人ホームと介護型有料老人ホームは実質的には同じ存在」と考えたからです。
裁決によると、大まかな事実関係は次の通りです。被相続人は、妻とともに介護型の有料老人ホームに入所しました。契約は、「目的=被相続人夫婦に本件老人ホームを終身利用させる。施設利用権=専用居室、浴室、介護室等共用施設を終身利用できる」という内容を含んだものでした。被相続人は終身利用できるよう費用の支払いのための十分な預金を持っており、入所後、外泊したことはありませんでした。また、入所後自宅は空き家となっていました。
国税不服審判所は、要旨「被相続人が住宅に居住していなかった理由、期間、その間の生活場所や状況、住宅の維持管理の状況など客観的な事情を総合的に勘案して社会通念上、被相続人等が当該家屋に居住していなかった状況が一時的なものであり、生活の拠点はなお当該家屋におかれているといえる場合には、その敷地は居住の用に供されていた宅地に該当すると解される。本件の場合、生活の本拠が当該家屋(自宅)に置かれていたとは認められない。したがって、本件宅地は相続開始の直前において居住の用に供されていたとはいえない」として相続人の請求を退けています。なお審判所は、国税庁の質疑応答事例について要旨「所用の要件全てを満たす場合には本件特例の適用を認めて差し支えないというものにすぎず、要件のいずれかを満たさない場合に、一切本件特例の適用を認めない趣旨とは解されないのであって、終身利用権の有無のみによって本件特例の適用の可否を区別しているものといえない」としています。
2、非線引き区域の土地で広大地になる条件
相続した非線引き区域の土地が、相続税の財産評価上、広大地として所定の評価減の適用ができるかどうかをめぐって争われた裁決事例が最近明らかになりました(平成22年5月25日)。
非線引き区域とは市街化区域か、市街化を抑制する市街化調整区域かを区分していない都市計画区域のこと。開発をする場合には都道府県知事の許可が必要になりますが、許可を要する面積は3000u以上とされています。一方、相続税の財産評価上、「広大地」と認められるのは、大規模工場用地や中高層マンション用地を除き、ア、その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で、イ、都市計画違法上の開発行為を行うとした場合公共公益的施設の用地の負担が必要と認められる土地とされています。
具体的な評価方法は、路線価地域では路線価×広大地補正率×地積という計算式で求めます。この場合の補正率は、「広大地補正率=0・6(0・05×広大地の地積(u)÷1000(u)」で計算します。また、倍率地域の土地については、その広大地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額を路線価として、路線価地域の計算に準じて計算することになっています。
かぎ握る開発指導要綱の実際の運用
問題になった土地は約2600uの土地です。相続人は、相続税申告後、この土地が広大地に該当するとして相続税の減額を求めて「更正の請求」をしましたが、当局に認められず、争いとなったものです。
相続人は「相続した土地の所在するこの区域では、開発に許可は要しないが、指導要綱により自治体と事前協議が必要。この10年間に186件協議が実施されおよそ40%が宅地分譲に関するものと聞いており、指導要綱に基づき道路設置の行政指導が行われ、問題の土地もそれにより公共公益的施設用地の負担が生じると考えられる」と主張しました。
しかし国税不服審判所は、要旨「非線引き地域では、開発に都道府県知事の許可が必要となる3000uに満たない宅地であれば、公共公益的用地の負担を強いられることはない。要綱等による行政指導を受ける場合には、法的拘束力に準じた事実上の強制力があり開発に当たって公共公益的用地負担による減歩が生じることがその地域において一般的であり、明確に確認できる場合を除き、「広大地」に該当しないと解するのが相当」との基本的な考えを示しました、その上で審判所は、要綱を所管する自治体に行政指導について「この地域で施行されている要綱等では1000u以上の開発行為について事前協議を行うこと。行政指導については、道路の設置を求めたことはなく、業者の判断に任せていること、画地の面積が一定面積に達しない場合区画の変更を求めることがあり、結果的に道路を設置せざるを得ない状況になることはあること」などを確認した上で「事実上の強制力のある行政指導が行われていた事実は認められず、事前協議によって公共公益的用地の負担を求められるのが明確だったとまでは認められない」としています。またこの地域ではこの土地をさまざまな用途に供することが可能であることから審判所は「問題の土地が経済的に最も合理的な特定の用途が公共公益的用地負担をともなう戸建分譲住宅地であるとまでは言えず、仮に問題の土地を宅地開発した場合道路設置が必要であったとしても、広大地としての補正が必要なほどの事情があるとはいえない」として相続人の請求を退けています。
(編集室 遠藤純一)
災害にともなう税金の扱いの特例
東北地方太平洋沖地震により被災された方々にお見舞い申し上げます。国税当局は、災害にともなう国税の手続き等の延長について扱いを明らかにしています。今後は政府の立法措置で、税制上の支援措置が受けられると思います。
さて、国税庁は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震にともない、国税の申告について延長などの措置を実施しました。国税通則法に基づき、国税庁が指定した対象地域は青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の5県です(3月15日付官報告示)。
国税のうち、3月11日以降に到来する申告の期限が延長されます。国税庁は、今後状況により適宜、対象地域を見直すこととしているほか、延長の期限をいつまでにするかは今後被災の状況に配慮して検討するとしています。なお、青森県と茨城県については平成23年6月3日付の告示で、申告等の期限延長期日を平成23年7月29日とされています。
また、この地域以外でも災害などにより申告が困難な場合、延長が認められます。この場合は、税務署長に対し、災害など申告等ができない「やむをえない事情」が落ち着いた後、相当な期間内に必要事項を記載した申請をすることが必要です。
国税庁では、たとえば次のような場合にも「やむをえない事情」と認められるとしています。
1 今般発生した地震により納税者が家屋等に損害を受ける等の直接的な被災を受けたことにより申告等を行うことが困難
2 行方不明者の捜索活動、傷病者の救助活動などの緊急性を有する活動への対応が必要なことから申告等を行うことが困難
3 交通手段・通信手段の遮断や停電(計画停電を含む)などのライフラインの遮断により納税者又は関与税理士が申告等を行うことが困難
4 地震の影響による、納税者から預かった帳簿書類の滅失又は申告書作成に必要なデータの破損等の理由で、税理士が関与先納税者の申告等を行うことが困難など(国税庁より)
国税庁は、以上の理由以外でも認められる場合があるとして、その場合には所轄税務署等に相談することをすすめています。