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遺産相続(相続税・登記・手続き・調整)Q&A
わたしは会社経営者(オーナー)ですが、相続はどうなりますか
オーナー(株式を所有する)として経営する非上場の会社はあなたの相続人にとっては相続税法上、相続財産になります。非上場会社の相続税法上の評価は想像以上に高額な評価になる場合もありますので注意が必要です。
ひとつの事例としては、経営者であるオーナーが会社へ多額の資金を貸し付けていた場合に、その貸付資金も立派な相続財産となりますから注意が必要です。
また、知人や友人に好意で貸し付けたお金も債権として相続財産になります。
事業承継の問題は、現実的な跡継ぎの問題の前に相続税法上の問題もしっかりと考慮しておかないと、相続人には思わぬ相続税額がかかってきます。
また、会社のオーナーの場合には、会社の借金の連帯債務者になっている場合が多いのですが、その会社の借金も相続人は相続することになり注意が必要です。借金の方が相続財産を上回る場合には、相続発生してから3月以内に家庭裁判所に相続放棄(※19)または限定承認(※20)を申し立てます。
<用語解説>
※19 相続放棄・・・相続放棄とは、相続人が遺産の相続を放棄することです。被相続人の借金が多額な場合や事業承継などで家業を安定させるために兄弟姉妹が相続を辞退する場合などには有効です。相続放棄をすると初めから相続人ではないとみなされます。相続放棄すると直系卑属(※21)であっても代襲相続はありません。
※20 限定承認・・・・限定承認とは、相続人が相続財産を相続するときに相続財産を限度として相続することです。つまりマイナスの相続財産は相続しなくていいことになります。
※21 直系卑属・・・・自分より前の世代に属する父母、祖父母などを尊属といい、自分より後の世代に属する子、孫などを卑属といいます。また、直系とは親族のうち祖父母、父母、子、孫などのように祖先から子孫へと続く親系をいいます。
わたしには養子はいますが、相続はどうなりますか
あなたの相続人が相続税の納税義務者になる場合には、民法上では養子は何人でも可能ですが、相続税法上では養子を一人までしか相続人として認められませんので注意が必要です。また、養子は、その税額が2割アップになりますので注意が必要です。
わたしの自宅は一戸建て住宅ですが、相続ではどうなりますか
相続財産の中で一戸建てのご自宅はマンションと違って一般の不動産市場における流通性やその活用には注意が必要です。マンションなら通常は不動産としての流通性がありますので、それなりの価格で売却や賃貸が可能です。ただ、リゾートマンションは注意が必要です。
ところが、一戸建ての住宅はメリットとデメリットが相反していることが多いのです。一戸建ての住宅は、メリットとして場所のいい物件であれば売却も賃貸もマンションと同様に可能です。しかし、場所によっては売却も賃貸も思ったような金額で可能にはならないこともでてきます。建築条件(※18)がいい場所であれば、建替えてアパートにするといった土地活用も容易ですが、建築条件が悪い場所の場合にはそういったことができないことも多いのです。特に地方都市の古い分譲地などはほとんど流通性がなくなっている場合もあります。そういった過疎化した分譲地は、賃貸もままならず売却もできずにただその不動産を所有しているだけにとどまらず高い固定資産税を永遠に払い続けなければならないというまさに負の資産になることも想定されます。
<用語解説>
※18 建築条件には、建蔽率(けんぺいりつ)や容積率(ようせきりつ)といった建築基準法上の条件と沿線や駅からの距離といった周辺の市場性の条件という2つの条件があります。
わたしの財産には兄弟と共有の不動産があります
不動産の遺産分割は共有すると将来の売却や相続でトラブルとなります。
それは、共有者同士の利害関係の調整が難しいからです。調整が難しいためにその不動産の現金化や活用が難しくなる可能性があります。
たとえば、祖父の時代の相続で叔父叔母5人の共有不動産を相続した事例で、このようなケースがあります。 他の共有者である叔父叔母はすでに他界しており、最終的に共有者は叔父叔母の子どもである従兄弟10人になっています。
そして、共有の相続財産は古い老朽のマンションで、すでに賃借人もいなくて廃墟になっているというのです。なぜなら共有者10人がその不動産の活用について意見が分かれてしまい先に進めないからです。 つまり、売却も建替えもままならず永遠と朽ち果てていき、固定資産税だけ共有者が払い続けていくことになります。もはやこれは財産でなく負の資産といえるので注意が必要です。
わたしは、アパートやマンション・駐車場などの賃貸不動産をもっていますが
自宅以外の不動産は、いざ現金化しようとするときに問題がでてくることがあります。
まず、アパートの築年数が短いとその建築資金の借り入れがまだ残っていることが多いと思います。
そうなると、そのアパートを相続した相続人はそのアパートの借金を引き継ぐことになります。アパートは長男が相続して借金は次男が相続するというわけにはいかないのです。
また、家賃などの収益のあるアパートなどの不動産は、管理や修繕費などの問題がでてきます。そして、老朽化したアパートをマンションに建替えようと計画したり売却をしたいと思っても立ち退き問題でトラブルになったり、最悪の場合には訴訟問題に発展する可能性も考えられます。
ただし、法律上、正当事由がなければ立ち退きはほぼ不可能となります。立ち退きの問題をかかえての売却も可能ですがそれなりの売却金額にしかなりません。
また、相続財産を共有した場合には将来の建替えや売却を踏まえ、共有者同士で意見がまとまらないケースも多く見られます。
わたしの親族に行方のわからない者や連絡がとれない人がいるのですが
もし、その場合には相続がスムーズに行われない可能性がります。Mbr>
親族の中で意外にも行方のわからない方や連絡がとれない方がでてくることがあります。20年前の結婚式であったきりで、それ以来音信不通の場合もあるでしょう。
親族の葬式の時に現れないからといってそのまま放っておくと、その方を相続人として探す時には困難を極めます。
相続時、どうしても行方がわからない場合は家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立てることになります。
ただし、遺産分割には相続人全員の合意が必要になりますから、相続が円滑に進んでいない場合には、とても厄介な問題になる可能性があります。
<用語解説>
※17行方不明者・・・・・行方不明者が相続人にいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立て、不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産を分割します。
わたしの相続では、パートナー(配偶者)にすべての財産を相続させたいですが
注意して遺言書を作成しないといざ相続の時にトラブルになる可能性があります。
配偶者以外に相続人がいない場合には、すべての財産は配偶者に相続となります。しかし、配偶者にすべての財産を相続することは遺言書をもっても遺留分を侵害してはできないことになります。
たとえば、子どもには相続させたくないと思って遺言書を作成しても子どもたちには法定相続分の1/2の遺留分※があります。あなたに子どもや孫といった直系卑属がいない場合には直系尊属※であるあなたの父母や祖父母に1/3の遺留分があります。
また、あなたに直系卑属※で父母や祖父母がいない場合にはあなたの兄弟姉妹やその代襲相続人である甥や姪には遺留分はありませんので、生前に遺言書を作成しておくことが有効な対策になります。
もし、この遺留分を侵害した遺言書の場合には、他の相続人から遺留分減殺請求※をされますのであなたの意思は実現できない可能性があります。同じく遺贈や生前贈与にも遺留分がありますので注意が必要です。
<用語解説>
※13遺留分・・・・遺留分とは、民法で定められた兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産のある一定の割合のことです。遺留分は相続順位※によって一定の割合があります。相続人の遺留分は遺産の1/2ですが、直系尊属のみが相続人の場合は1/3になります。
※14遺留分減殺請求・・・・遺言書で法定相続人である配偶者や子どもが遺留分に満たない相続額しか受け取れなかった場合にその不足した遺留分を請求することです。法定相続人には、それぞれ法定相続分の2分の1の遺留分があります。遺留分減殺請求は、相続の開始を知った時から1年以内に行わなければなりません。遺留分減殺請求は家庭裁判所に申し立てる必要はありませんが意思表示をすることが必要です。なお、被相続人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
※15直系卑属・・・・自分より前の世代に属する父母、祖父母などを尊属といい、自分より後の世代に属する子、孫などを卑属といいます。また、直系とは親族のうち祖父母、父母、子、孫などのように祖先から子孫へと続く親系をいいます。
※16直系尊属・・・・自分より前の世代に属する父母、祖父母などを尊属といい、自分より後の世代に属する子、孫などを卑属といいます。また、直系とは親族のうち祖父母、父母、子、孫などのように祖先から子孫へと続く親系をいいます。
わたしの相続では、ある一人(特定)の相続人に財産を多く相続させたいのですが
遺言書を作成しておかないと、望みとおりの相続が実現できない可能性があります。
あなたの相続人の一人により多くの財産を残したいと思っても、相続人には遺留分※8がありますから遺言書作成には注意が必要です。そういった場合には一般的遺言書※9作成が有効ですが、遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言があります。最近は公正証書遺言が一般的になってきています。
<用語解説>
※8遺留分とは、民法で定められた兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産のある一定の割合のことです。遺留分は相続順位によって一定の割合があります。相続人の遺留分は遺産の1/2ですが、直系尊属のみが相続人の場合は1/3になります。
※9遺言書には、@自筆証書遺言(条件は、遺言書の全文が遺言者の自筆で記述・日付と氏名の自署と押印・家庭裁判所の検認)とA公正証書遺言(証人2名と遺言者の署名と押印をもって公証人が証書を作成)、B秘密証書遺言(証人2名をもって遺言内容を秘密にしつつ公証人が関与して証書を封印・家庭裁判所の検認)
わたしの相続では、法定相続人以外にも財産を相続させたいのですが
遺言書を作成しておかないと実現できない可能性があります。
法定相続人※以外は相続人になれないので、生前に遺言書を作成しておかないとあなたの意思は実現できないことになります。遺言書を作成することで相続人以外にも相続できるようになります。
ただ、遺言書作成には、相続人への遺留分※には注意が必要です。相続人がいない場合には、相続発生後に法定相続人以外が特別縁故者※として家庭裁判所に申し立てることができます。
<用語解説>
※10法定相続人・・・・相続ができる相続人は、法定相続人として民法で決められています。そしてその相続順位は、民法で決められています。まず、配偶者は常に相続人です。そして、被相続人の直系卑属(ひぞく)である子どもや養子が第1順位、第2順位は被相続人の父母である直系尊属、第3順位は兄弟姉妹になります。この相続順位は、第1順位の相続人がいる場合は、第2順位、第3順位の相続人には、相続の権利はなく、同じく第2順位の相続人がいる場合は、第3順位の相続人には相続の権利はないのです。
※11遺留分とは、民法で定められた兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産のある一定の割合のことです。遺留分は相続順位によって一定の割合があります。相続人の遺留分は遺産の1/2ですが、直系尊属のみが相続人の場合は1/3になります。
※12特別縁故者・・・・被相続人の生前中に被相続人と生計を同じくして、被相続人の療養看護に努めた方やその他、被相続人と特別な関係にあった方を特別縁故者といいます。
私には相続人として代襲相続人がいますが、私の相続はどうなりますか
代襲相続人※5がいるということは当初の相続人が死亡しているということになりますが、その場合に死亡した当初の相続人には配偶者がいることになります。代襲相続人が若い場合には、遺産分割協議には代襲相続人の親である配偶者にも配慮が必要となりますから注意が必要になります。
また、代襲相続人が未成年者や被成年後見人の場合、その保護者や成年後見人が被相続人の養子になって相続人の場合には代襲相続人と相続人同士としていわゆる利益相反となり、遺産分割協議のときに保護者や成年後見人として当事者になれませんので、家庭裁判所にて、特別代理人※6を選任することが必要になります。
代襲相続人のひとつの事例としては、被相続人の子どもが先に死亡していることになるのですが、子どもの配偶者がその後再婚していて実質的に他の子ども達とまったく縁がなくなっている場合もあります。そうなると相続人である子ども達からみると代襲相続人である甥姪との遺産分割に争いが生じてくる場合もあります。また、縁遠い関係の従兄弟や甥や姪と連絡がとれない方(行方不明者※7)もでて来る場合もあります。万が一そうなると遺産分割がスムーズにできないことになりますから注意が必要です。
<用語解説>
※5 代襲相続人・・・・代襲相続人とは、相続が発生したときに法定相続人であるあなたの子どもや兄弟姉妹が先に死亡している場合にはその子ども(孫や甥名)があなたの子どもや兄弟姉妹に代わって相続人なることです。ただし、あなたの子どもの子孫はどこまでも代襲相続ができますが、あなたの兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪の一代限りとなります。
※6特別代理人・・・・保護者(親権者)である父母とその子との間の利益相反行為は,家庭裁判所にその子の特別代理人の選任を請求する必要があります。
※7行方不明者・・・・・行方不明者が相続人にいる場合には、家庭裁判所に不在者財産管理人選任を申し立て、不在者財産管理人が行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加し、遺産を分割します。
私には子どもはいませんが、私の相続はどうなりますか
あなたに子どもがいない場合には、あなた(被相続人)の相続人はあなたの配偶者とあなたの直系尊属であるあなたのご両親や祖父母になります。また、すでにご両親や祖父母がいない場合には、あなたの相続人はあなたの配偶者とあなたの兄弟姉妹となります。
あなたの相続人があなたの配偶者とあなたの兄弟姉妹の兄弟姉妹の場合に、法定相続人としてあなたの遺産の1/4を相続する権利があります。配偶者の相続分は3/4までです。そのまま相続になると兄弟姉妹にも財産がいくことになり配偶者としては納得できないかもしれません。
現実問題として、あなたの配偶者は相続発生後にいわゆる遺産分割協議であなたの兄弟姉妹からの合意をもらわないと相続手続きは終わらないことになります。
これを防ぐには遺言書作成が有効です。
なぜなら、あなたの相続人である兄弟姉妹には遺留分※がないからです。これなら安心して相続問題は解決するかもしれません。
<用語解説>
※2遺留分・・・・遺留分とは、民法で定められた兄弟姉妹以外の相続人に対して留保された相続財産のある一定の割合のことです。遺留分は相続順位※によって一定の割合があります。相続人の遺留分は遺産の1/2ですが、直系尊属のみが相続人の場合は1/3になります。
※3法定相続人・・・・相続ができる相続人は、法定相続人として民法で決められています。そしてその相続順位は、民法で決められています。まず、配偶者は常に相続人です。そして、被相続人の直系卑属(ひぞく)である子どもや養子が第1順位、第2順位は被相続人の父母である直系尊属、第3順位は兄弟姉妹になります。この相続順位は、第1順位の相続人がいる場合は、第2順位、第3順位の相続人には、相続の権利はなく、同じく第2順位の相続人がいる場合は、第3順位の相続人には相続の権利はないのです。
※4直系尊属・・・・自分より前の世代に属する父母、祖父母などを尊属といい、自分より後の世代に属する子、孫などを卑属といいます。また、直系とは親族のうち祖父母、父母、子、孫などのように祖先から子孫へと続く親系をいいます。
私には配偶者がいませんが、私の相続はどうなりますか
あなたにはすでに配偶者がいませんので、あなたの子どもが相続人になります。もし、あなたに子どもがいない場合には、あなたのご両親が相続人になります。
ご両親やさらにあなたの祖父母もすでにいない場合には、あなたの兄弟姉妹が相続人になります。また、兄弟姉妹もいない場合には、あなたの甥や姪が相続人になります。
もし、あなたの相続人が相続税の納税義務者になる場合には注意が必要です。あなたの相続人は、配偶者がいないことで配偶者控除※1が適用はありません。
また、配偶者がいないためにあなたの相続発生後にあなたの相続財産の遺産分割を子どもたちだけに任すため万が一の場合には争いが起きる場合があります。
ひとつの事例としては、相続人である子どもが自営業であって資金繰りが悪化して遺産分割に問題がでてきたこともあります。
<用語解説>
※1配偶者控除・・・・配偶者が相続する割合が法定相続分以下の場合に相続税はかかりません。
また、配偶者の相続する財産が1億6,000万円以下の場合にも相続税はかかりません。
ただし、配偶者控除の適用には、相続税の申告期限(10ヶ月以内)までに遺産分割協議書を作成して相続税の申告する必要があります。